出会いやご縁を大切に。
地域と繋がる交流の場にしていきたい。

社会福祉法人 稲穂会 理事長

髙橋 義之

髙橋 義之

合施設としての広がり

老人ホーム、デイサービス、こども園、相談(高齢、障がい)他を運営。
複合施設としてのメリットを活かし、地域で40余年以上のお付き合い。

『社会福祉法人 稲穂会』は昭和50年、私の父である先代の時代に法人としての歩みを始めました。法人になって40余年以上が経ち、特別養護老人ホームができて20年以上になりますが、地域の方とは細く永く、ボランティアの方も含めてずっと助けていただいています。
先代の頃から地域との交流は活発で「保育園と特別養護老人ホームで世代間交流をしたい」との先代の想いから始まった夏祭りは、今も続いています。お子さんが盆踊りを踊り、それを高齢者の方が見学したり、こどもたちと高齢者の家族の方が触れ合ったりと非常にいい関係が育まれています。

現在も、老人ホームの高齢者の方がこども園を訪れ、参加までは難しいのですが、運動会を見学して雰囲気を楽しんでいただいています。高齢者の方が喜ばれるのはもちろん、こどもたちがおじいちゃん、おばあちゃんと触れ合う様子がとても微笑ましく、最初はお互いにたどたどしかったのが、5分10分すると仲良くなる様子は心温まるものがあります。

施設に来ていただくボランティアさんもそうですが、地域の方を含め、出会いやご縁を大切にしたいと思っています。スタッフだけでできることにも限界があるので、色々な方のお力を借りながら、ボランティアさんもこんなことがしたいと積極的に提案してくださるので、きちんとお応えできるように。特に福祉は「人の手仕事」、労働集約が高い仕事なので、人とのご縁を大切に、地域交流の場を提供できればと考えています。

護観について

介護はそんなに遠いものではない。
もっと身近にあるもの。

基本的には「介護に正解はない」と思っています。それだけに、スタッフ同士でいい意味で意見がぶつかることもありますが、単純に利用者様の立場に立って、スタッフ本人がいいと思ったやり方を取り入れてもらえばいいと思っていて、そこはかなり幅を持たせています。

法人として築いてきたやり方が当然あるのですが、5年前、10年前とは介護の世界もかなり変わってきています。スタッフには自分の意見をきちんと持ってほしいと考えていて、イベントなども言われたことだけをするのではなく、自分で企画をして意見もどんどん言ってほしいと伝えています。

正直、介護の仕事はそんなに難しいとは思っていません。スタッフにも「自分の家族や身内だったら、どうするかということを考えればいいんじゃないかな」と常々、話しています。自分自身がおじいちゃん、おばあちゃん子だったので、介護はそんなに遠いものではなく、近くにあるはずのもので、難しい理屈をわざわざ持ってくる必要はないと考えています。技術や理論、情報は当然、必要ですが、その信念となるところは「どれだけご本人やご家族の立場になれるか」が基本です。この施設なら自分の両親をあずけたい、自分のおじいちゃん、おばあちゃんに使ってほしい、障がいのある人が利用したい、こどもがいれば、こども園に入れたいという考え方が一番わかりやすいのではないでしょうか。

後のヴィジョン

ボランティアさんの参加や、地域交流を活発に。
さらには産官学連携の情報発信も。

今後のヴィジョンとしては、いくつかあるのですが、これまで以上にボランティアさんに来てほしいと思っています。今は年間400~500人来ていただいているのですが今後は年間3,000人ほど来て頂きたいと考えています。自分たちの力だけでは限界があるので頼れるところは頼っていこうと、丸1日でなく少しだけでもいいので、協力して頂けるボランティアの方の数を増やしていく計画も練っています。

地域に向けては、情報発信のためにも、今以上に防災などの訓練も地域の方と一緒にしていければという想いがあります。こういう施設なので防災食なども多少用意しているのですが、地域の方には助けて頂くことのほうが多いので、地域の方と日々のお付き合いのなかで、よりよい関係を築いていくため、外に向けての発信力を強めたいというのがひとつです。

もうひとつは産官学連携です。企業と行政と一体となって、介護の業界では今、ICT(Information Communication Technology =情報通信技術)の活用や介護ロボットの研究が進んでいるなかで、実際の介護の現場ではどのようなニーズがあり、どのような手助けがあれば働く人が楽になるかを体験できる場面や、ロボットだけではなくパソコンのシステム開発など、企業や大学、行政など様々な方面の力を借りながら、新しい介護の形を探っていく礎になればと願っています。

また、身近なところでは、今はこども園の延長保育を夜8時迄しているのですが、小学校にあがったお子さんの放課後のよりどころとなる場所を作っていければと思っています。学生さんにボランティアで来て頂いて、こどもたちの学習支援をしてもらったり、保護者が遅くまで仕事をしているお子さんであれば、夕飯を一緒に食べたり、その作り手が高齢者や地域の方だったりというのもいいのではないでしょうか。

さらに、中間的就労といって、引きこもりやニートの方の就労訓練場所にも登録しています。そうした子は優しい子が多いので、ここで働いて自信がつけば、本来自分が行きたい企業に行き、社会復帰してくれればと願っています。
社会貢献、地域貢献だからということではなく、永年、色々と活動を続けてきたなかで、様々なニーズが聞こえてくるので、色々な人が交流し、何かを見つけることができるきっかけ作りになる場所にしていきたいと考えています。

穂会で働きたいと思ってくださる方へ

前向きな失敗は評価します。そして、一緒に悩みます。

『稲穂会』は自分で何かをしたい方には、すごくいいところだと思っています。よく話すのは「前向きな失敗は評価します」ということ。しないよりは、して後悔。そして、一緒に悩みます。解決しますとは言いませんが、相談してくれれば、答えを見つけられるかどうかはわかりませんが、一緒に悩みます。とりあえず何かあれば言ってきてほしいということは常々、話しています。

イベントなどの企画も、現場のスタッフには通りにくいと言われているのですが「とりあえず、やってみ」と声をかけています。実際にやってみると色々と問題がありますが、それでも「やらない材料を出してくれるな」とは言います。ひとつ企画が出たときに「こうだから、やめましょう」という意見は言ってくれるなと。もし、やめましょうと言うなら、その代わりの意見を言ってほしいと話しています。基本はこの企画をすると決まれば、どうすればうまくいくか、リスクは何かを考えます。もちろん、リスクはあるでしょうから、それを自分たちで意識して管理しながら、成功すればそれでいいという考え方です。

僕自身が失敗だらけの人間なので、人は絶対、失敗しないと成長しないと思っています。いきなり大きなこともと思いますので、できるだけかすり傷で済むことから始めて、責任と権限の小さな段階のイベントから関わり、失敗から学ぶのもいいのではないでしょうか。

また、ジョブローテーションも柔軟で、もし資格を持っているのであれば、特別養護老人ホームやデイサービスで働いていたスタッフが1年間、こども園で働きたいというのも可能性はあります。ひとつとして可能性があるなら、そこはだめとは言わないつもりです。今までにも資格を取りたいと休職して学校に行くスタッフも何人かいましたが、前向きな行動は支援しています。
求めるのは、資格よりもハートのある人。資格も大事ですが、ハートがあれば、全くの未経験の方でも全然構いません。ぜひ、地域や人とつながる施設を一緒に作っていきましょう。